ピカソの陶器作品、ご存知でしょうか?「地中海人ピカソ-神話的世界に遊ぶ」展
はじめに
今回は表参道駅からほど近い住宅街にある「ヨックモックミュージアム」を訪れました。こちらの美術館は2020年に開館したばかりの比較的新しい施設です。そして、世界的に有名なアーティストである「ピカソ」の陶芸作品を専門に収集している珍しい美術館でもあります。ピカソの陶芸作品はまだ観たことがなかったので、今回こちらにお邪魔することにしました。
ヨックモックミュージアムとは?
ヨックモックといえば、洋菓子が有名ですよね。自分へのご褒美として、また贈答品として頂いたという方も多いのでは?ヨックモックミュージアムは会社創業者・藤縄則一氏の「菓子は創造するもの」という思いを受け継ぎ、主にピカソの創造あふれる陶器作品を、様々な企画展を通して収集・展示している美術館です。ヨックモック・コレクションの特徴は、ピカソの指導のもと制作された「エディション」と呼ばれる作品を収集していることです。現在では500を超える作品を所蔵しているそうで、ピカソの陶器作品に特化したミュージアムは世界でも珍しい試み。一方ピカソは、説明不要の世界的に最も有名なアーティストの1人ですよね。普段美術館になかなか足を運ばないという方でも、どこかで一度は作品を目にしたことがあるはず。時に難解と言われる独特の絵画作品で有名なのですが、実は数多くの陶芸作品を残していたことをご存知でしょうか。当時60代半ばのピカソは、南フランスの陶芸の街に移住し、陶器の作品制作をスタートさせたそう。芸術に対して常に挑戦し、まっすぐな気持ちで向き合ったピカソ、どんな陶器作品を制作したのか楽しみです。
一軒家風のお洒落な美術館
外観はモダンで豪華な一軒家を感じさせる雰囲気でしたが、近づいてみると建物正面には「ヨックモックミュージアム」の文字。ミュージアムの壁は、美しいブルーにヨックモックの有名なお菓子を思い起させる造形の凝ったつくりになっていて、いたる所にざらっとした陶器の風合いを感じさせる素材が使用されています。
館内に入ると、明るいイメージの外観からは異なり、ほの暗くどこか格調高い空気感に「作品を観るぞ!」という期待感が高まります。平日だったので人も少なく、ひっそりと自分と作品だけの時間を楽しむといった贅沢なひととき。対照的に2F展示室では、開放的な自然光の中で作品が生き生きと色鮮やかに見えるように思いました。アットホームさと、高級感を感じる展示空間の違いによって鑑賞者側の気分が変わり、楽しめるつくりになっていますね。
果たしてピカソの陶磁器は…
ピカソの陶芸作品からは、どれもアートを楽しむ伸び伸びとした明るさが感じられました。ピカソが陶芸を本格的に始めたのは第二次世界大戦後のこと。戦争の悲惨さを訴える「ゲルニカ」を描くなど平和を愛していたことで知られるピカソ。そんな彼の気持ちが表れているのかもと感じました。神話や闘牛、魚、鳩、フクロウ、魚介類などピカソにとって思い入れのあるモチーフがたくさん登場しており、日常に根付いたものをテーマとして多く扱っています。時に可愛らしく、ユーモアのある作品はつい夢中になって鑑賞してしまい、日頃のストレスを忘れさせてくれました。「ピカソの絵画作品がよく分からない、少し苦手。」という方でも、彼の陶器作品は楽しめるという方もいらっしゃるかもしれません。
おすすめは2Fにある映像!
今回とても印象に残ったのは、美術館2Fにて公開している映像です。この映像では、ピカソが陶芸制作に携わる様子を収めているのですが、映像を観る前と観た後では、作品へのイメージが変わります。ろくろをひいたばかり(ろくろをひいているのは職人さんです)で、まだ土が柔らかい状態の壷?水差し?からピカソが手早く慎重な手つきで鳥をつくる様子や、絵柄を施す様子などが映し出され、何度も観たくなる内容のものでした。制作風景以外にも、陶工の人々とのやりとりの様子やピカソと親交があった方へのインタビューなども興味深い内容でした。ピカソのアートに対する深い思いだけでなく、正直な人柄や社会に対しての鋭い見識も垣間見ることができました。ますますピカソという人物、そして彼の作品を知りたくなりましたね。時間が許すのであれば、最初から最後まで見るのがおすすめです。
ヨックモックならではの開放的なカフェ
ヨックモックミュージアムにはスイーツのお店らしい、素敵なカフェが隣接されています。小さくて可愛らしいお菓子がガラスケースに並べられ、鑑賞後の休憩にぴったり!
ミュージアムグッズを扱うコーナーも設けられ、文房具などのオリジナルグッズが多数揃っていました。ピカソが人形になったこんなグッズも!
また、スペースの一角にはピカソに関する本が集められたライブラリーもありました。開放的なスペースで気軽に入れるので「もっとピカソについて知りたい。」と思った方には嬉しい場所だと思います。
ヨックモックミュージアムを訪れて
南青山の住宅街に馴染むヨックモックミュージアム。一歩足を踏み入れると、厳かな雰囲気で秘密基地のような地下の展示室に驚きました。それとは対照的に自然光や小さなテラスが親しみやすい雰囲気の2F展示室。対照的な空間の中でピカソの陶芸作品を味わえます。「どんな空間で作品を観るか?」という要素は、鑑賞する側の気分や作品へのイメージを変えることに気づきました。ピカソに関する本をじっくり眺めたり、友人とミュージアム・カフェでお茶を飲みながらゆっくり作品について語ったりと、アートに触れながらリラックスした時間を過ごせそうな美術館だと感じました。
さいごに
ピカソの陶芸作品を一度に鑑賞できるのは滅多に無い機会です。陶芸に興味のある方、ピカソが好きな方は必見の美術館ですね。表参道や渋谷を訪れた際にも、気軽に足を運べる立地なので、気になる方はぜひ訪れてみてくださいね。
<ヨックモックミュージアム>
〒107-0062
東京都港区南青山6丁目15-1
ヨックモックミュージアム
03-3486-8000
アクセス:
東京メトロ「表参道」駅B1出口から徒歩9分
渋谷駅東口より都営バス「新橋駅前」行乗車、「青山学院中等部前」下車徒歩1分
※駐車場なし
休館日:月曜日・年末年始 2021年12月27日(月)~2022年1月3日(月)・展示替期間
※ただし月曜日が祝日の場合、臨時開館
開館時間:10時〜17時
※入館は閉館の30分前まで
「地中海人ピカソー神話的世界に遊ぶ」展
会期 2021年10月26日(火)~2022年9月25日(日)
※上記の情報は、変更される場合がありますので来館の際には事前にご確認ください。