隠れ家のような美術館、「森の美術館」を訪れる
長い間気になっていた千葉県流山市にある「森の美術館」。インターネットで検索すると評判も良く、HPで拝見した美術館の様子もとても素敵で是非訪れてみたいと思っていました。
「森の美術館」とは？
流山おおたかの森駅から徒歩20分ほどのところにある「森の美術館」は2016年8月にオープンした比較的新しい美術館です。敷地面積的には大きめの一軒家のようなこぢんまりとした印象ですが、モダンなしっかりとした建物で、美術館独特の風情が十分に感じられます。主に風景や人物像の油絵などを中心に年3、４回企画展や所蔵展を開催しているそうです。有名なアーティストから、知る人ぞ知るアーティストまで美術館独自の視点で様々な作品を紹介しています。
美術館へ向かう道は散歩にもぴったり
今回美術館には最寄り駅からバスで向かいました。駅からのんびり歩いても良かったのですが、生憎季節は真夏。過ごしやすい時期には徒歩もおすすめです。美術館の周囲は落ち着いた環境で、現代的な建物の小学校や農園もあり自然豊かな印象でした。そして美術館の魅力の1つは敷地内にある竹林！美術館の人に伺うと、竹林や中庭に散策に出てもOKなようです。
「中嶌虎威展」絢爛と清新 －日本画であるために－
開催されていたのは茨城県つくば市在住の日本画家・中嶌虎威さんという方の展覧会でした。中嶌さんは、伝統的な日本画と向き合いながら作品制作を続けている画家さんです。彼は「岩絵具の美しさ」「線描の力」を日本画の魅力としてあげており、自らの作品の中にもその考えが反映されています。実は中嶌さんのことは存じ上げていなかったのですが、美術館HPにアップされていた動画を拝見し、是非作品を鑑賞したいと思い足を運びました。今年80歳を迎えたという中嶌さん。一体どんな作品と出会えるのでしょうか。
厳しい自然をあえて淡い色彩で描く
滝や崖、山々を描いたシリーズは気になった作品の1つです。
独特の線と柔らかな色合いは、穏やかで幻想的な雰囲気をただよわせており、ふと物語のワンシーンの中にいるような感覚に陥ります。展示会場内には装飾的ではっきりとした色彩の作品が多い中、このような絵画も手掛けていらっしゃるのだと驚きました。１人の作家さんの様々な作品を鑑賞していると「この人はこんな作品も制作するのだなと。」と意外な発見があり、面白いです。
日本の春
「春咲く」という作品。春に咲き乱れる花々が美しくはっきりと描かれています。
芽吹き、目覚めの春というよりは麗らかな春という風情ですね。作家さんのお考え通り、近代以前の日本独特の美が表現されている作品だと思いました。装飾的ともいえる色使いや大胆な構図は日本人が持つ思い切りの良さや潔さが宿っているのかもしれないと思わせてくれます。日本の春、というと儚い桜の花を第一に思い浮かべる方も多いかもしれませんが、こちらの作品では椿が主役のようにも感じます。
秋のオーケストラ
「月に秋草図」は大型の絵画作品で、絵の前に立つとまるでお月見をしているよう。
秋の草花がまるでオーケストラのようで、静かな雰囲気の中にも賑やかさがあります。闇に浮かぶ金箔は、秋の夜の深さを思い出させてくれます。
作品の購入も可能！
受付近くに設けられたスペースや壁面には中嶌さんの小作品が展示されており、購入することもできるのだそう。展示されている作家さんの作品をその場で購入することができるなんて何だか贅沢ですよね。今回気になったのはこちらの作品。
家に飾って思う存分愛でてみたいものです。
竹林を眺めながらほっとひといき
作品鑑賞後、美術館ではドリンクとお菓子をごちそうになりました。美術館のチケットを提示することで受けられるサービスなのだそう。
使われているお皿もさりげなく素敵でした。他の美術館にはなかなか無い嬉しいサービスですよね。休憩のための座席スペースからは中庭や竹林も望めます。このスペースには展示されている作家さんを紹介した書籍なども用意されており、じっくりと展覧会を振り返るひとときを過ごせます。
ずっと気になっていた「森の美術館」は、自然豊かな住宅地に佇む素敵な美術館でした。美術館の方に伺うと、家族連れの来館者も多いようです。中庭や竹林もありますし、展示スペースがそこまで大きくないので小さなお子様を連れた方も訪れやすいのかもしれません。「美術」というと、近寄りがたい。難解である。というイメージをお持ちの方も多いように思います。このような美術館が各地にできると、「美術」は気軽に日常の中で楽しむものという感覚が人々に根付くのではないでしょうか。自宅や職場の近くにこのような美術館があったら素敵だなと想像しました。
いかがだったでしょうか。美術館の雰囲気を楽しみながら、どこかほっとできる。そんな空間が「森の美術館」の魅力です。気になる展覧会が開催されましたら、美術館周辺を散策がてら訪れてみるのがおすすめです。
＜森の美術館＞
「中嶌虎威展」絢爛と清新 －日本画であるために－
期間：2023年6月3日～2023年７月30日
住所：〒270-0122 千葉県流山市大字大畔（おおぐろ）315
TEL/FAX：04-7136-2207
開館時間：10:00～16:00（入館15:30まで）
休館日：月曜日、火曜日
アクセス：流山おおたかの森駅 徒歩20分
（つくばエクスプレス/東武アーバンパークライン）
東武バス西口ロータリー2番のりば
（南流山駅・クリーンセンター行）大畔下車 徒歩5分
流山ぐりーんバス（西初石ルート）
おおぐろの森中学校前下車 徒歩1分
※会期は終了しております。
